第一章

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憎悪に満ちた目が、レオンを射抜く。 「村長の娘の許嫁が村を捨てた。お前っていう裏切り者のせいで、俺達家族まで裏切り者扱いだ。お陰で、お前の代わりに俺が許嫁になった。村の教師にもなった。 何で、俺がリリスの許嫁になろうと考えたか分かるか?」 話を振られ、目を逸らしながらレオンは答える。 「家族の為…」 「…違う。リリスの為だ」 ますますリオンの怒りは高まっていく。 「お前、石を投げられた事はあるか?」 「…!?………すまん」 自分の軽率な行動の為に、家族に肩身の狭い思いをさせていた事を聞かされ、レオンは悲痛な面持ちで強く拳を握った。 「だが、彼女だけは違った。俺が落ち込んでいる時も、彼女だけは側にいてくれた。…彼女を捨てたお前の家族だった俺にだ。捨てられた者同士と言えば簡単だが、彼女も弱っていた。ふらふらと川に行くと、飛び降り様としていたよ。俺は一人で釣りしてた。始めは止めたけど、二回目は一緒に飛んでやるって…そしたら、一緒に生きて欲しい。そう言われた」 リオンはスコップを拾うと、埋葬を再開する。 「リオン。本当にすまなかった」 深々と頭を下げたレオン。 それを一瞥すると、リオンはスコップをレオンの脳天に叩き降ろす。
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