第四章

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「頼むじゃねぇ…頼むじゃねぇ…」 限界が近いのか、うわ言の様に繰り返している。 それを迷惑そうに見ていた店の従業員が、店主であるあの商人を連れて来た。 「リオン殿!?」 「ハックさん。護衛の兵士を連れて来ました」 「おぉ。ありがたい。ささっ、中へどうぞ」 息子・娘の護衛を受けてくれた兵士達に、笑顔を向けて、店の中へと招くが、兵士はそれどころでは無かった。 「主人。申し訳ないが、この者に何か食わせてやってくれんか?」 「へっ?」 「どうやら行き倒れの様だ。食事代は私が出す。頼む」 何言ってんのと、リオンは決意固い兵士の横で、ギースがくたばる様に祈った。 だが、兵士の頼みでは断れない民衆の性が仇となる。 「分かりました。今、何か持って来させます。おい。適当に何か持って来させよ」 「…はい!」 嫌そうな顔をしたまま、従業員が奥に消えて行く。 「しかし、熊の様な男だな」 「それより、なんて格好だ。布に頭を通しただけなんて…」 「追い剥ぎには遭いそうにないが…」 「いや、この毛布は上物だぞ。何か事件に巻き込まれたのかも?」 熊一つで、謎が幾つも浮上しているが、原因は横にいるリオンである。 忌々しく熊を見つめる彼には、誰も気付かない。
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