第十話.七つの大罪「怠惰」

38/82
前へ
/1195ページ
次へ
「…そう…」 ヒナタはエリザベスの発言を聞いてまた考え込む。 どうやら八重と雨時の母、梅雨は表舞台から忽然と姿を消した、有名な遺伝子研究の博士のようだった。 そして面識が無いとはいえ、エリザベスは梅雨が表から消したのは結婚後引退したと思っているとのこと。 これはつまり、八重達の境遇をエリザベスはまだ知らないとのことだった。 それを聞いたヒナタは、エリザベスとはあまり関係ないと思うと同時になぜここに梅雨の名前が書かれた日記があるのかと思った。 「それで、その梅雨君がどうかしたのかい?」 「……いえ、なんでもないわ…… …あとで話す…」 「…?そうか…わかった」 「皆さん、こちらから先に進めそうですよ」 ヒナタはエリザベスの質問に日記を見て話そうか迷うが、まだ情報が少ない以上根拠も無いと思いエリザベスにあとでと伝える。 エリザベスはヒナタの様子に疑問に思うが、話せないとわかったのか深く考えず静かに返事をする。 すると、ユリが先へ進む道を見つけたのか三人に声をかける。 その声に三人は静かにユリの後を付いていき、ゆっくりと先へ進んでいく。 長い廊下を渡り、くねくねと曲がった廊下を四人は歩きながら終始無言を貫いていた。 そして、ヒナタはふとユリのある発言を思い出し、ユリに声をかける。 「…ユリちゃん…」 「なんでしょう、ヒナタさん」 「貴女…全て知ってると言ってたよね…?」 「ご想像にお任せしますよ」 「…ソルのこと何処まで知ってる?」 ヒナタのユリに対してソルは何処まで知っているのかと質問を投げかける。 それを聞いたユリは、ピタッと立ち止まり振り返らず静かに返事をする。 「…もちろん、全部ですよ」 「…そう…… …もう一つ質問、ソルは…ただの人間?」 「何故そう思いますか?」 「…もう一度聞く、ソルは本当に"ただの人間"?」 「ヒナタ君…?」 ヒナタの唐突な質問にエリザベスは疑問に思う。 何故急にソルについての質問をするのか、だ。 それでもヒナタは真剣ではあるが表情を崩さず冷静さを保っており、じっとユリの背を見つめていた。 対するユリは振り向く素振りを見せず、ヒナタに返事をする。 「…ソル様は、本当にただの人間でしたよ とくに、目立った才能を持っていない普通の…」 「…そう、わかった」 ユリの返事を聞いたヒナタは、暫し無言になるとあっさりとした返事をする。 わかった…と。
/1195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加