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まず彼が驚愕したのは、髪色だった。
紅色に染め上げられたであろう髪は痛むことなく、むしろ元々そうであったかの様にその容姿に溶け込んでいた。
当時好奇心旺盛だった彼は未知との遭遇に心を踊らせ、キラキラと不良を見上げ叫んだ。
「真っ赤なお兄さんだぁー!」
「っるせぇなこのクソガキッ!!」
「っ……」
不良が怒鳴った刹那、彼の思考は停止した。
その、彼を見据える鋭い眼光に。
その、彼に対し威圧する低い声色に。
そして、それらが全て彼を拒絶するものだと理解すると、再び彼の思考は動き出した。
彼は拒絶されたことがない。
故に、彼は初めてその感情を明確に知ったのだ。
初めて向けられた負の感情。
それは、幼少期なら誰もが体感する苦々しい感情。
しかし、彼の心中には悲しみや戸惑いなどなく、ただ初めて向けられる感情に高揚していた。
「真っ赤なお兄さん怒った!なんでなんで?」
「ちっ、なんだこいつ、うぜぇ……」
「ねぇ、ねぇ」
「あ"ぁったく!うざいんだよクソガキがぁ!」
不良が彼に向けて来る感情はとても純粋で、今まで彼が好意だと思っていた周りの感情が酷く穢れて見えた。
それから彼は幾度も不良と会った。
不良の名前はそーちょーと言うらしい。
中々自身の事を教えてくれない不良に対して、彼が幼いながらに導き出した情報だ。
しかし、周りが呼んでいるのをそのまま彼は使ったので真偽は定かではない。
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