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「「きゃああああ!!」」
食堂に入った瞬間、親衛隊の悲鳴が耳に響いた。たまらず眉を寄せるが、副会長はそれをものともせずただ一心を見つめて歩いていた。副会長の視線を辿ると、その先には、黒い毬藻がいた。
……毬藻が。
はぁああぁ?!
毬藻じゃん!毬藻が運命の人とか副会長はふざけてるのか!?
驚愕している俺様の目に写るのは、毬藻を連想させる黒いモサモサ頭に、分厚い瓶底眼鏡。まさに絵に描いたようなオタクだった。副会長はオタクに近寄ると、オムライスを貪るその背中に抱きついた。食堂中が一瞬にして静まり、視線が副会長とオタクに集まる。
「鈴!会いたかった!」
「うおっ……て玲奈じゃん!」
そんな食堂の様子をまったく気にせず二人は呑気に話し始めた。
玲奈、というのは副会長の清水玲奈のことだ。女のような名前だから呼ぶなと生徒会の自己紹介の場面でいっていたが……。
それにしてもオタクな見た目に反して随分と煩いな……。
「おい、そのオタクが運命の人とやらか……?」
たまらず小声で副会長に訪ねると、オタクに聞こえたらしく反論してきた。
「なっ……、オタクじゃねぇ!俺は田嶋鈴だ!」
こちらを睨み怒鳴る姿は俺様にとって珍しい反応だったので、少しオタクに興味が沸く。
「田嶋、といったか……「田嶋じゃなくて鈴って呼べよ!」
は?せっかく俺様が話そうとしたのに何かと思えば名前で呼べだと?
……名前で?
…………。
「初対面で名前を呼べなんて、なっ、なにいっちゃってんの!?しょしょしょ初対面だぞ!?失礼!非常識!破廉恥!」
「「「「「は?」」」」」
きっと俺の顔は真っ赤だろう。
名前呼びなんて妹くらいにしかしたことないんですが?!滅茶苦茶恥ずかしいから!!まさか初対面でこんなん言われるとは思わなかったし!!驚きすぎて今までのキャラ崩れちゃったし!!
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