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「そーだよー、いいお湯だったー」
「何ちゃっかり混浴してんのよあんたら。まさかお風呂で変なことしてないでしょうね?」
洗面器などの入浴セットを手に、訝しげな目を向けてくる沙菜様。
さっきまで僕らが掛けていた「入浴中」の札が裏返るのを待っていたらしい。
「変なこと?変なことってどんなことだい、沙菜様」
「う、それは……とにかく、あそこは一応公共の場なんだから、後の人のことも考えて入りなさいよね」
沙菜様が何を心配しているのか大体察しはつくけど、僕と綾子はピュアなお付き合いを心がけているんだ。
沙菜様が心配するようなことは起こりやしない。
「だいじょーぶだよ沙菜。大地、結局一度も反応してくれなかったし……」
「いや、何を言っちゃってるんですか綾子様」
「え、マジで?一度も?それは流石にないっしょ。刈谷、一応男でしょ?大丈夫?」
「一応って何さ!放っといてよ!純粋に温泉楽しんで何を心配されなきゃならないのさ!」
「いやまぁ、いいけどさ。綾子も綾子だけど、刈谷の方もちょっとアレだよね」
「そうなんだよ沙菜ぁ。大地ったらね、性欲が全然ないんだよぉ」
もうホント、この子に自由に喋らせちゃダメだねこれ。
「もういいですから……帰っていいですかね」
「ちょっと待てや刈谷大地ぃ!聞き捨てならねぇぞおい!」
何だか理不尽な蔑みを受けそうな気がしてその場を去ろうとした僕を、足元からの声が呼び止めた。
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