昭和10年(1935年)12月。

76/76
前へ
/215ページ
次へ
「なるほど、君風に言えば京都作法って訳か。 それなら食ってやらないと、こちらが無粋という事になってしまうな」 「そういう事だ。 新生帝大一流倶楽部の幹部たるもの、決して無粋な真似をしてはいかん」 「余程僕達に列車を降りてほしくないようだな。 困った連中だ」 そんな言葉を交わしつつ、ずるずると音を立てて茶漬けをすする悟と弥吉。 付き合っていられるかと言わんばかりに、大阪行き夜行急行が身震いしながら名古屋駅を発車してゆく。 すると一等車の一角から 「やれやれ… 無粋ここに極まれりどすなぁ」 …と小声が上がるのであった。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加