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翌朝の6時30分頃。
山陽本線三原駅を定刻の23時25分に発車した大阪行き鈍行列車は、須磨駅到着まであと15分程の位置を走っていた。
傍らで未だ眠るユリネとは対照的に、陸攻が一睡もしていないのは言うまでもない。
ユリネの護衛の為なのは言うまでもないのだが、実は陸攻が眠れない要因がもうひとつあるのだ。
それは、親友兼永遠のライバルである嵐山から進呈された手帳。
表紙を開けてすぐのページに
この先は大阪に着くまで開けたらあかんでクマ
…と記してあったアレである。
「一体何が書いてあるんだ?
…ちょっと位ならいいよな」
陸攻は小声でそう呟きつつ、何故か辺りを気にしながら注意書きの記されたページをめくる。
直後陸攻の目には、こんな文章が飛び込んで来たのであった。
『まだ須磨辺りやろクマ?
折角寝んとここまで我慢したんやったら、あともうちょいぐらい我慢せぇ。
そうそう、三ノ宮で降りて神戸市電乗ろうってなら後回しにしとき陸。
ユリネちゃん船旅でごっつう疲れとうやろからな。
…もう一辺だけ書いといたる。
列車が大阪に着くまで、この先は絶対開けたらあかん。
それでも開けようってんなら…
ええんかぁ?
知らんでぇ?
せや、ユリネちゃんが起きたら、あと一枚だけページめくってええで』
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