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緊張した状況で、ハルクはいつもどおり振る舞ってくれている。ひとりで悠理のあとを追うよりも、ハルクがいてくれた方がずっと心強い。
ふいに、ウチらの前を少年がひとり、通り過ぎて行った。
切れ長の瞳にすっとした鼻。
――似ている?
ウチは自然と少年を目で追った。
少年が歩いて行った先には、茶色いセミロングの髪をひとつにまとめた、淡い黄色のカーディガンを着た女性。
「ねえ、いつまでここにいるの? もう帰ろうよ」
女性の息子らしき少年が、呆れたように言った。女性は唇の両端を無理矢理上げるだけで、答えない。
「もー、お母さん。そんなにあの人に会いたいの? 僕はあの人が父親になるの嫌だな。いい大人が、女性をこんなに待たせるもんじゃないよ」
「待たされてるわけじゃないのよ」
「ええ?」
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