初恋

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「おはよう、早いね」 よく眠れないまま朝を迎えて、 キッチンに立つ雪さんの声にドキリとする。 「うん。出社するのに緊張してるのかも……」 誰のせいだと思ってるんだよ? 「和哉君ならすぐ慣れるわよ」 「何?さりげなく俺が無神経みたいに言ってる?」 昨夜見てしまった、 夫婦の営みが頭の中を何度も駆け巡る。 いくら俺が爆睡してると思っても別室でやってくれればいいのに。 「たくましいって言ってるの」 あんな、 普通じゃないセックス。 「…………まぁ、俺の人生たくましくなきゃ生きてこれてないよね」 あんな、 淫らで 凄く乱れてるのに、声を押し殺して、 水城ユウに抱かれている雪さんが、 「生活で困ってることが言ってね。 何か縫製しなきゃいけないとか、昼間の手続きとか……」 俺の中で 俺に蝕まれていくそんな妄想が 「そのときは甘えるね」 脳裏に植え付けられて困ってるんだよ。
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