780人が本棚に入れています
本棚に追加
「せ、生物兵器?!
ここ、日本ですよ?!大日本帝国時代じゃあるまいし、そんなこと研究してるところがあるんですか?!」
あまりの現実離れした答えに、
俺は、タバコの煙たさを忘れて村上さんの方を向いて、空気をバクバク吸った。
「お前、エイズがアメリカの細菌兵器だっていうのも都市伝説だと思ってるだろ?」
「なんか、そんな著書もありましたね。
だけどそれが事実なら もっと暴露されていいと思うし……」
「暴露しようとした人間や研究所は消されてしまうからな。怖いぞ。」
「…………対抗するために日本もそういう生物兵器を作ってるってことですか?」
小説や社会人向け漫画や映画のような話を聞いて
俺は、窓から見える平和な東京の景色でさえも作り物のような気がしてきていた。
「日本には優秀な研究者が多いんだ。
インフルエンザだって、本当は日本人が発見したウィルスらしい。
海外から有名な博士を引き込んで、
嫌日本のアジア諸国やアメリカに負けないウィルスを研究して製造に成功したって情報を掴んだから、その裏を取りたいんだ」
先ほどまでのメンドクサ気な村上さんはいなくなり、
何かを全うしようとするギラギラした瞳が、
少し怖かった。
「それを週刊誌が暴露したら、
諸外国に潰されるんじゃないんですか?」
ほっとけばいいじゃんと、単純に思う俺。
まだ、
ちゃんと人もまともに愛したことない俺には、
そんな嘘かホントか分からない話の真相なんてどうでも良かった。
そんなことより、
人の気持ちを操れる薬とか、
そんなのがあればいいと思う。
「それを保存するだけでなく悪用しようとする人間や上の奴がいるから、内密は良くないんだよ」
「…………その研究所に?」
「絶対いるさ」
平和な日常が、
実は いつ壊されたり脅かされたりするのか分からない現実だとしたら、
俺は、
できたらずっと、夢を見てみたい。
人の欲望に翻弄される様なんか、
もう見たくはないんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!