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「菜月ちゃんは、幼稚園で何して遊んでるの?」
俺には妹がいて、
父さんが死に、
母さんが刑務所に入ってからは、
それまで仲良くなかったはずの妹とも、
絆が強くなったような、
お互いを大事にしなきゃいけないような、独特な連帯感が生まれたような気がする。
「菜月、お絵描きしてる」
「へぇ、絵が好きなんだ」
「カズヤも描いてあげようか?」
4歳の女の子に呼び捨てされる21歳の俺。
「おー、描いて描いて」
それにデレデレするからといって、けしてロリコンではない。
「あ、先にママ描く。あと、パパも」
「いいよ。あとで」
菜月がクーピーから生み出す画用紙の家族たちは、
ピンクや黄色で彩どられ、
そこでもとても幸せな色をしていた。
「やっぱり、パパはイケメンなんだな。俺には必殺仕事人の京本に見えるぞ」
「パパ、水城だよ」
「うん、知ってるー」
水城ユウ____
Cahon 写真コンテスト、【人物の部】。
それに、現在妻の雪さんをモデルに使った、
手錠と花を多用し、淫靡で華やかで芸術的な写真を出品。
……優勝という名誉を勝ち取った過去がある。
それから彼は
一躍人気カメラマンとなった。
「ご飯できたわよ!」
「カズヤ、またあとでね!」
そんな水城ユウを俺の母さんは愛して、
…………ホントに愛して
不倫を精算したはずのお父さんまでを殺害し、
その罪を彼になすりつけてまで、
その心と身体を
独占しようとした。
そんな親の元に産まれた俺は、
……俺と妹は、
きっと、
普通には誰かを愛することはできないかもしれない。
「カズヤと風呂はいるー」
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