初恋

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「和哉君、うなされてたわよ」 風呂から上がってからすぐに、 菜月と、布団の上で寝転がっているうちに寝てしまったらしい。 雪さんが、ひんやりした手をオデコに当てて俺の目を覚ます。 「………………夢、覚えてないんだけどな」 これは嘘だ。 時々、 母さんが警察に連行されていく夢を見てしまう。 決まって、現実とは異なり、 母さんが泣きわめいて俺に助けを求める夢を……。 「なんか飲む?」 「ユウさんはまだ?」 和室で寝ていた俺は、 風呂上がりの雪さんから、冷えたビールを受け取って、 「機材トラブルで、遅れてるらしいの」 そのビールを飲む、濡れた桃色の唇に見とれていた。 白い輪郭に映える 淫靡な形…… 会っていない間も、 何度も妄想しては 「ユウさんはモデルや女優さんにモテるんじゃないの?心配じゃない?」 その中で、 奪っていた。
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