986人が本棚に入れています
本棚に追加
/637ページ
雨の匂いがする。
この湿ったような独特の香りが、この世界に充満している。
「雨振りそうだよね。深青(ミオ)、傘持って来た?」
「んーん。真理は持って来たの?」
「うん、天気予報で30%だったから念の為」
お昼休み、空は曇り空。窓際の席の私にその後ろが真理の席。
彼女――宮瀬真理とは2年のクラス替えがキッカケで仲良くなった。ふっくらした体型でそれが何というか、優しい雰囲気を作りだしてる。
「あー! 私は持ってきてない! やだなぁ……降るなら今の内に降って、帰る時には止んでくんないかな?」
私と真理の横でぼやくのは国仲こずえ。同じく2年のクラス替えから仲良くなった。
背が高くて美人で、真理と正反対の性格とも言える。とっても明るい子。
こずは私達から席が離れてるので、お昼休みにはこうして私達の席へと移動してくる。
窓の外からは、はしゃぐ男子の声が聞こえる。
お昼休みの運動場。うちのクラスの男子がサッカーをして遊んでる。その姿を思わず私の瞳は追ってしまう。
「ねぇ深青?誰を見てるの?」
「え? ……誰も見てないよ」
「嘘ばっかり! そろそろ白状しようよ。何なら当てようか? 誰を見ているのか」
疑うような眼差しを向けられてドキッと心臓は跳ねるけれど、誤魔化すように目を逸らす。こずに気付かれてるかも知れない。
最初のコメントを投稿しよう!