透明な恋-1

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私の視線の先の彼の姿。 “空より鮮やかなブルーだ” 美術の時間、私が画用紙の上に描きだした空をみて、彼は笑ってそう言った。 その日の空は少し薄めの青だったのに、私はコバルトブルーのような、鮮やかな空を描きたくなった。 真っ白な画用紙は安物の粗さだったけれど、オレンジ色の絵筆で描く鮮やか過ぎるブルーの線は気持ちよく伸びて、白を青に染めていった。私の名前のような青。 彼の何気ないその言葉は多くの意味を持たないと思うのに、何故だろう? 同じ感覚を彼と共有しているかのような錯覚に陥った。 それから、何故かわからないけれど気になる。 無意識に私の視線は彼を追い、その都度胸の奥が色んな感覚に襲われる。 親友に向ける稀に見せる柔らかな笑顔を見つければ、温かくなる。 たまに遠くを見る切なげな視線に気付くと、何だか胸が重くなる。 シャーペンを回す癖、友達といる時によく腕組してる姿。まるで観察してるかのように、色んな彼を発見していく日々。 中学2年の私は恋をしてるんだと思う。多分、この息苦しいような感覚はそうなんじゃないかって。 そんな事を思い返していると、こずが呟いた。 「ねぇ、深青……見てるのって……香坂じゃない?」 私はその言葉に目を見開いた。私がこずに返事をしようとした時、ドタドタと廊下から足音が聞こえ、さっきまで運動場にいた男子達が教室へと入って来た。 「あっちぃ~! 放課後まで待てねー! 今食いたいわ、アイス」 「秀さぁ、サッカー部やめた方がいいぞ? 才能ねーわ、お前」 「負け惜しみかよ中丸。ちゃんと奢れよ?高いヤツな?」 6人の集団の中心にいる、“秀”と呼ばれる人物。白い歯を見せて笑ってる彼の名前は香坂秀臣。
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