第2章

78/78
1572人が本棚に入れています
本棚に追加
/422ページ
「無理することないよ。 君は気にしなくていい。後のことは僕にまかせてくれたらいい。」 これまでの苦労を知ってる。 もし、欠員ができたら、アンケート用紙も書き直さないといけないし、進行にも影響が出る。 皆んなに迷惑を掛ける事は目に見えていた。 頭の中で、何度もリピートされる大森さんの言葉。 “覚悟が足りない。 イベントを成功させようとする、覚悟が足りない。” ずっと、そうだった。 何をするにも真剣じゃないわけじゃない じゃないけど、私はどこか他人事だった。 会社に対しても、仕事に対しても だから、平気で無理だって言えちゃうんだ。 課長に甘えてちゃいけない。 一番成功したいのは、課長なのに、私みたいなモノの為に多くのことを妥協させちゃいけない。 そう思ったらいてもたってもいられなくて、勝手に口が動いていた。 「本当に違うんです。転んじゃったんです。思ったより痛くて泣いちゃったんです。 …私、やれます! 私でよければ、やらせてください!」 泣き腫らした不細工な顔を、課長に真っ直ぐにむけた。 課長は、少しだけびっくりして瞳を大きく開いた。 私は、勢い良く課長にお辞儀をすると、化粧室の方向に急ぎ足で向かう。 「井川さん。」 急いで向かう私の背中を、課長が呼び止める。 私が振り返ると、とびっきりの優しい顔をした課長がニコッと笑った。 「ありがとう! それに、それ、君にとっても似合ってる」 そう言いながら、課長は首元を飾っているネックレスを指差す。 私は、その一言でボンと顔を赤くした。
/422ページ

最初のコメントを投稿しよう!