第4章

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 私の様子が急変したことに気付いたのか、米澤さんは疑わしい顔をした。そして、そっと私の視線の先を追う。  そしてふんと一言漏らすと、怪しく口角を上げた。 「何? 傷ついてるの?」  何て思いやりの欠片もない言葉なんだろう。私の心をその言葉は、持っている威力通り突き刺した。いつもは鎧を被って、幾分その威力を和らげようと心が働くのに、今に限ってそれが機能しない。ダイレクトに突き刺さる。  どうしよう、泣きそうだ。こんな男の前で。  何が私の涙腺を刺激しているのかなんてわからない。課長が私以外の人と手を握っていること?米澤さんの酷い言葉のせい?  向こうで課長と篠さんが、楽しそうに歩いている。綺麗なコスモスが鮮やかで、それゆえ残酷だ。    私とも手を繋いだ癖に、そうやって篠さんとも繋げるんだ。そう思ってしまう自分に蓋ができない。    最低。 「何? 言葉もでない? さっきの勢いはどうした?」  もう、米澤さんの言っていることは頭に入らなかった。その時、気付いてしまった。  うんうん、本当は、始めから気付いていたんだ。    課長が好きだ。    でも認められなかった。だって、きっと課長を好きになるのは、傷ついてしまうことを意味しているって、本能で嗅ぎ分ける。私は傷つけられる。    気持ちが溢れてくる。あなたが好きだ。止められない。  視界の端で、二人を捕らえ、こらえられない涙が瞳いっぱい溜まってくる。  見開いた瞳を思いっきり開いた。閉じた瞬間に、それは重力に逆らわず落ちてしまう。  こんな人の前で泣きたくない。  見開いた目に力を込めて、米澤さんを睨み付けた。 「外野は黙ってて!」  それは、私の精一杯だ。それ以上の言葉は出てこない。    米澤さんは、もう何も言わなかった。
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