第5章

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 私が信じられないもの。 一つ。呑んだくれ岡田主任の協力体制。 「ちょっと、何で怒ってるんだよ。」  岡田主任は私のデスク横で、書類を持って腕を組んでいる。 「そんなのは自分の心に聞いてください。」  そう言い放つと、岡田主任の持っている書類を無言でぶんどった。  あの後、...あの忌々しいコスモス畑の後、朝食会場のレストランに行っても岡田主任は現れなかった。そして、二日酔いでぐったりした岡田主任と出くわしたのはロビーの大広間。その時「よう、おはよ。」っと顔をにへらと緩ませ酒臭い匂い満載で言われ、全く覚えていませんよ的なことは一目見たら理解できた。それから、2日過ぎても私の怒りはおさまりつかず、現在に至る。 「もう、本当、ごめんと言っただろう? 何があったか知らないけど、もうそろそろ機嫌直してよ。」  私は、岡田主任を薄く睨んだ後、もう少しお灸をすえたい気持ちに襲われたが、そもそも岡田主任はそんなに悪くないことは知っていたし、このどこにもやれないイライラを全て彼のせいにするのは気の毒な気もしていた。 「...今度、奢ってください。」  ポツリと漏らすと、待ってましたとニッと岡田主任が笑う。 「ソレソレ、お安い御用だよ。ありがとう。」  っと、私の頭を無骨な手でわっしゃわっしゃしたので、「ちょっと信じらんない」っと直ぐにいろいろ撤回したくなる。  この人はこんな人なのだ。それに憎めないという、人徳だ。...そうだけども、呑んだくれの岡田主任には気をつけようと心に決めたのは確かだ。
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