第1章

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--武井さん間違ってる。 これって、営業課井川晃課長に送りたいんだよね。 私と同姓同名(名前の漢字は違うけど)の人。 間違いメール。 減ってきてはいるものの日常茶飯事で、内容もこんな仕事を絡ませて誘ってます的な感じは珍しくない。 それにしても、さっきすっごい形相で怒っていた武井さんだよね。 見間違いじゃない? もう一度、画面に釘付けになる。 武井さんも井川課長狙ってるんだ。 私に用があるときは、直接電話で呼び出すくせに、メールの仕方分かんないと思ってた。 出来るだけメールでやり過ごしたい時だってあるのに、メール使えんじゃん。 私、井川晶と営業課の井川晃は同姓同名でよくこうやって間違ってメールが送られてくることがあった。 新入社員の時は、頻繁で時には社内秘ぽい内容のメールまで でも、最近はそれも減ってはいるものの.....まさかの武井さん。 うーん、こてんぱにどやされた後。 武井さんに、間違ってますよってわざわざ知らせ、 「私、読みました。」アピールをして、弱みを握るか。 それとも、いつものように井川課長に 何事もなかったように転送して、通行人のように知らぬ存ぜぬでやり過ごすか。 --何だかんだ言っても武井さんにお世話になってるし。 少しの迷いを抱えながら いつものように井川課長に転送ボタンを押した。 それにしても、井川課長って罪作りな人。 あんな人に本気になっても悲しいだけなのに 皆、分かっているのにそれでも彼にプッシュする女性が後をたたないのは何故? 私は、絶対にごめんだ。 ため息を吐き出すと 画面の「送信しました」のアイコンを押して、座っているローラータイプの椅子を前にずらし姿勢を正した。
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