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「ホント、何ていうかドジ。いんや、おっちょこちょいと表現した方がいいのか」
部屋に入るなり答案用紙を見ながら、肩を揺すってクスクス笑い出す俺様が憎らしかった。しかし世話になっていたため、冷蔵庫から持ってきた冷たい麦茶を無言で差し出してやる。
「おっ、サンキュー。気が利くな」
コップを丁寧に両手で受け取り、なぜだか顔をまじまじと凝視してきた。
(顔に、何かが付いてるのだろうか?)
不審に思った当時の俺は、両手で意味なく顔を触ってしまったんだ。その様子を見て俺様は思いっきり顔を歪ませ、ぷっと吹き出す。
「兄弟でも全然似てないんだな。雅輝とは全然違う」
「ああ、よく言われます。性格も真逆だし」
「確かに。見た目はおまえの方が繊細そうなのに、答案用紙の文字はすっげぇガサツに書いてある上に、解答はおちょこちょいだし、雅輝がしっかり者になるのが分かるわ」
答案用紙をわざわざヒラヒラさせ、笑いながら失礼すぎることを次々指摘してきた。
それが面白くなくて唇を尖らせて俺様をじと目で見つめると、頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でてくる。
「そんな不安そうな目で俺様を見るな、大丈夫。この次は絶対にこれよりもいい点が取れるように、キッチリ教えてやるからさ」
その俺様に教えて戴くこと自体が超不安なんだと思いつつ、浮かない気分で答案用紙に視線を落とした。
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