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そんな不安な心中を抱えてる俺に、江藤さんは今日ミスったところを分かりやすく丁寧に教えてくれた。
「この難しい問題は解けるのに応用ができていないのは、やっぱ痛いよな」
「はあ……」
「あとここ。この計算問題さ、難しく考え過ぎ。しかも字が汚い――間違ってるここの問題、途中まで合ってるじゃないか。バカだなおまえ」
「すんません……」
椅子に座ってるできの悪い俺の背後にピタリと張り付き、的確なアドバイスをしながら馬鹿な俺でも理解できるように、次々と分かりやすく教えてくれた。しかも学校の先生より教え方がうまい。この人、いったいナニモノ?
思わず、答案用紙と俺様の顔を交互に見てしまった。
「チッ、おしいな。この問題も途中まで解き方は合ってるのに。……そういや俺様も、似たような問題でミスったのを思い出しちまった」
ププッと吹き出して俺の頭を小突いてきたので、俯かせていた顔を上げた。すぐ傍にある俺様の姿に、一瞬息を飲む。
窓から入ってくる光の加減で薄茶色の瞳が淡い色を放ち、それが妙に色っぽく見えるせいで思わずドキッとした。しかも笑うたびに柔らかい髪がフワフワと揺れて――そこからわずかにいい香りがする。
「何だ、その顔。俺様だってミスることくらいあるんだよ。佑輝くん」
「あのっ名前。……教えてください。何て呼べばいいか分からなくて」
「そういや教えてなかったな。俺様の名は江藤 正晴 。みんなからは江藤ちんと呼ばれているが、おまえは江藤様と呼ぶがいい」
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