第1章

10/14

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
目の前にある、ほんの少し冷めたグリルサンドを口にする。モソモソと、微妙な硬さのチーズが口の中で奥歯にまとわりつく。 「…バカみたい」 一日分の食事と同価値のそれを、珈琲で胃に押し込んだ。全て飲み込んでしまいたかったんだ。彼との思い出と一緒に。 彼は仕事場の上司。関係を持ったのは一年前で、当時入社してすぐの私は、彼に一目惚れした。家庭があるのは知っていたが、先に誘ったのは彼だった。少し躊躇いながらも誘いにのった。だって、彼のことが好きだったのだから。 そして、捨てられた。 9月の昼下がり。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加