第1章

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つぎの日会社へ行くと、いつも通りの彼がいつも通りに仕事をしていた。何事もなかったようだ。いや、何事もなかったのだ。私達は秘密の関係だったのだから。 お昼休み 「わー子ちゃんっ」 声をかけてきたのは、同僚の英里だった。東条英里(23)、昨年共に入社し、営業のほうにいる。同い年のせいか、気も合うので親友のようなものかもしれない。発音が悪いのか、それとも癖なのか、私のことを「わ子」と呼ぶ。 「今日もお弁当?」 無邪気に笑いながら問いかけてくる。まるで子供のようだ。 「今日は食堂でなにか買うよ」 「珍し!わ子がお昼買うなんて」 そう。いつもなら弁当を作ってくる(節約のため)が、今朝はそんな気分になれなかった。
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