第2章

3/9

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
南 奏一、それが俺の名前。フルート奏者の母がつけた名前だが、母の願いは叶わず、俺は音痴で楽器なんか吹けなかった。秀でたものがあるとすれば、絵画だった。 小さい頃から絵を描いた。小学校ではコンクールでそれなりの賞をもらい、高校まで美術部、そして大学も芸術学科へ進んだ。 そこまでは良かった。 進学後、これといった夢もなく、ずっと絵を描いていた。勉強はあまりしなかった。おかげで就職失敗。卒業後はフリーターとしてなんとなく働いてみた。コンビニ、ガソリンスタンド、配達員…どれも長続きしなかった。 とりあえず毎日キャンバスと睨めっこしながら、絵を描いて過ごした。両親からは、特になにも言われなかった。兄が有名な会社に勤め、そこで出会った人と結婚し、うまくいったからだろう。 どうせ俺は落ちこぼれ。出来損ないの次男。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加