第2章

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そして、今に至る。 8月なんて嫌いだ。暑い。暑すぎる。誰だ、夏なんて季節を考えた奴は。日本には何故四季がある。ずっと秋でいいのに。 彼女が最後に手にしていたのは、珈琲だった。部屋にあるコーヒーメーカーで先程入れた物だ。ポットには熱い珈琲が並々と注がれ、隣には氷の入ったガラスコップが2つ。アイス珈琲にでもするつもりだったのだろう。コーヒーメーカーのある机には、彼女が専門店から買ってきた、珈琲豆の袋が3つ置いてある。その日の気分に合わせて、いつも替えているらしい。正直、味の変化はわからないが。珈琲は好きだから、入れてもらったら必ず飲んでいる。俺、多分珈琲だけで生活できる気がする。というか、しないといけなくなるかもしれない。 手元に金はほとんどない。あるのは絵の具とキャンバス。そして、小さなこの部屋。 あぁ、なんと素晴らしい自分の世界。そろそろ新しいバイト先を探さねば。
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