第2章

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彼女はいつも、俺に尽くしてくれた。仕事が終わり暇な日は、ご飯を作って持ってきてくれた(俺の部屋に調理器具がないからだ)。休みの日はよく、珈琲を淹れに部屋へ足を運んだ。そして、気の済むまで絵を描くのを見て、満足して帰る。友達ともたまには遊んでいるらしい。誕生日にはプレゼントをくれた。大学を卒業してからは、決まって洋服だった。なんせ、俺は何も言われなかったら毎日同じ服を着るからだ。おかげで白い服なんか、ペイントが施され世界にひとつの一品となってしまった。 身体の関係はなかった。俺は愛が元々なかったため、求めることはなかった。彼女は性欲が皆無らしく、誘ってくることはなかった。俺がいるだけで幸せなんだと。 彼女は完璧だった。就職し、大手のデザイン会社に勤め、収入も安定していた。彼氏思いで、尽くしてくれた。 そんな彼女が、果たして俺といて幸せになれるのだろうか。確かに今は、傍にいれば幸せかもしれない。しかし、そろそろ結婚も視野にいれていい歳。なのに俺は結婚なんてする気もなく、彼女の時間を奪ってきた。最低な男なのだ。 だから、別れという選択をとったのだ。彼女の為でもあり、俺の為でもある。そこをご理解頂きたい。
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