第2章

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今日も俺はキャンバスに向かい、絵を描く。淡い、青を主に使う。理想は、小さい頃住んでいた田舎で見た、朧月。十数年前のことなのに、今でも瞼の裏にあの画が焼き付いている。あの朧月夜を絵に描きたい、できることなら現地に行きたいけど、そんな金の余裕なんてない。 俺が売れないわけは、こだわりを捨てれないからだ。いろんな絵を描けばいいのに、ひとつのものに執着している。だからダメなんだ。 たまには目を違うところへ向けないと、なにもできなくなってしまう。だからといって、恋愛に目を向けることはできない。いい加減な対処をしてしまうと、また彼女のように悲しむ人を生み出してしまう。本当に好きになった人…そんな人と次は交際したい、そう思った。 …まぁ、無理だろうけど。 朧月夜、淡い月の光、照らされる少年が一人。青白い空、薄い雲、流れる風。
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