第3章

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「あら、仲良くなったの?いつからそんなに人懐っこくなったのかしら」 静江がトレイを持って台所から出てきた。皮肉を含んだように聞こえるのは、果たして気のせいだろうか。 「叶和子さんがキレーだったから話してみたの!」 義人君はそう言って静江に駆け寄り、「僕のは?これ?」と湯気の立つ大きめのマグをトレイの上から取った。甘い、ホットミルクの香りが漂う。その中を控え目な紅茶の香りが、あまり主張しないよう、簡素に踊った。 「最近、紅茶に凝ってね。今日は王道だけどダージリンにしたの。口に合うといいのだけど」 静江は私の前にティーカップを置き、紅茶を注いだ。真新しいティーカップとポット、ぎこちない動きから、本当に最近ハマったものだと思われる。 「全部、昨日買ってきたくせに…」 ボソッと義人君が私にしか聞こえないように呟く。思わず苦笑いした。この子、天使の皮をかぶった悪魔なんだ。 正直、あまり紅茶は好きではないが、せっかくの機会なので少しずつ飲んでみることにした。
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