第3章

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ちびり、ちびりと紅茶を口に含み、香りを確かめる。悪くはない。しかし、良くもない。私は断然コーヒー派なのだ。朝食には、どんなに時間がなくてもコーヒーを淹れるし(たまにサボってインスタントだが)、カフェでも必ずと言っていいほどコーヒーを頼む。それも、ブラック一択。I love coffee 「お口に合うかしら?」 静江はニッコリと微笑みながら首を傾げる。バカ野郎、私はコーヒー派なのだ、なんでもいいからコーヒーを出さんか。そんなこと言えない。 「紅茶なんて、久し振りに飲みました。とても美味しいです」 「そう、なら良かったわ」 そう言うと静江は、カロリーの塊・チョコレートブラウニーに手を出した。ひょいとつまみ上げ一口で半分ほど食べてしまった。私はそのブラウニーが、唾液にまみれ、静江の口の中で消化されやすい物体になっていくのを想像した。グチャグチャと固体が液体になっていく様を。 それから私は、小一時間ほど消化器官の旅をしながら、静江の世間話に適当な相槌をうって過ごした。
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