第1章

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店内をゆっくりとしたサウンドが歩く。 私がきた時と同じ、無機質なチャイムが来客を告げた。 彼だ。 私を探す、キレの長い彼の目が私をドキドキさせる。 この店には不似合いな白いジャージ姿だったが、彼には良く似合っていた。 私を見つけた彼は、思いのほか私が近くに居たためか、目が合った瞬間子供のように微笑んだ。 「いや、遅くなってすまない」 そう言いながら、私の正面に腰掛けた。 「いえ」と首を横に振った。 「何か頼んだかい?ここはサンドイッチがうまいらしいよ」 メニューを開き、目を通す。 笑ってしまうような値段だった。 「お腹はあまり空いてないので…オリジナルコーヒーのアイスを」 謙虚に、3番目に安価なコーヒーを頼んだが、それでもかなり高価だ。 彼は店内を呼び、オリジナルコーヒーとグリルサンドを注文した。 「お腹、空いているだろう。遠慮はするな、仕事お疲れ」 言わなくても気遣ってくれる、この優しさが大好きだ。 「ありがとうございます」
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