第1章

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店内をゆっくりとしたサウンドが止まることなく歩き、私と彼を包んだ。優しい、パンの焼ける匂いがする。なんと香ばしいことか。 あぁ、この幸せな時間が止まってしまえばいいのに… 「……ゎ子ちゃん」 「叶和子ちゃん!」 「え!?」 いきなり名前を呼ばれて、驚いてしまったが、一番驚いたのは私の声を聞いた彼のほうだろう。 「ぼーっとしてたよ。大丈夫?」 「あ、はい」 「仕事終わりで疲れてたもんね、呼び出してホントごめんね」 これ。この優しさ。大好き。 好きな人から心配されるのは、こそばゆいが、とても嬉しい。ニヤニヤしてないか不安だ。それくらい嬉しい。
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