第1章

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「実は、嫁さんが昨日倒れてね。病院行ったら、おめでただったんだよ。それでね、しばらくしたら家事とかあまり出来なくなるし、僕も手伝わなきゃならない。小学生の息子の面倒も見ないといけない。叶和子ちゃんのこと、好きなんだけどさ、僕にも家庭がある…だから」 え、なにこれ。さっきまで心配してくれたじゃない。可愛いって褒めてくれたじゃない。なんなの、なんなのよ。 私、ちゃんと笑えてますか? うまく、笑えてますか? 気が付くと私の目の前には、彼の代わりにコーヒーとグリルサンドがあった。チーズ、ベーコン。ガムシロップ、ミルク。いつもなら胸が踊るのに。 店内は、相も変わらず、ゆっくりとしたサウンドが歩いていた。私の横を素通りするように。
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