明日、嫁に行きます!

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「……まあ、そうですね」  なに、中途半端なその間。気になるんですけど。  だいたいこんな綺麗な男、さすがの私も一回見たら覚えてるわ。  ……でも、気になる。  もしかしてパーティー以前にどっかで会ったのかなと、記憶の引き出しを開けまくるんだけど、生憎該当のものは見つからない。  疑念を晴らすべく問いを口にしようとした時、 「さ、ここで着替えてもらいます」  会話はもう終わりとばかりに打ち切られてしまった。  ここで着替えてもらうって、え、なに?  車が止まった先に視線を流して、ギョッとした。  ……マジデスカ。  そこはテレビでもよく紹介される、有名なブランド通りと呼ばれるお洒落な一画だった。  鷹城さんが「ここだ」と指差したお店は、軒を連ねる店舗の中でも群を抜いて高級そうな佇まいをしていた。  赤茶けた瀟洒(しょうしゃ)な煉瓦造りの建物には、誰もが知るブランド名がシルバーフレームに記されている。  店名を見た瞬間、私の顔が『ムンクの叫び』になってしまった。  鷹城さんの嘘つき! なにが大丈夫よ、どこがラフなお店よ、ここ超高級店じゃない!!  どう穿ってみても普通の女子大生が行ける場所じゃない。  敷居が高すぎる。  茫然自失になる私を、鷹城さんは無理やり車から引き摺り出した。  私は「鷹城さんの嘘つきっ!!」と叫びながら脱兎の如く逃走しようとしたんだけど、鷹城さんの動きの方が一瞬早かった。  私のズボンをガッシリ掴んだ鷹城さんは、抵抗する私の身体を抱え込み、逃げられないようにしてしまう。端から見たら、仲良さげに寄り添う二人として映るだろう。  けれど、実際は違う。  ベルトをガッシリと掴まれ無理やり歩かされる私は、さながら刑事に捕まった犯人のようだった。  そして、ズルズルと引っ張られるままとうとう店の前まで来てしまう。  私は死刑囚のような面持ちで、重々しく威厳に満ちた佇まいの店舗を悄然と眺めた。  なに、あの眩いばかりに光り輝くシャンデリア。絨毯真っ赤だし、従業員の皆様、黒服に白手袋まで着用してらっしゃいますよ。  どの辺がラフなんでしょうね? 貴方、これがラフに見えてるんですか? 頭大丈夫ですか? 視力悪いんでしたね、そのせいでしょうか。
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