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表情の乏しい彼の顔には冷笑が浮かび、愉しげに揺れる双眸で私の反応をうかがってるんだ。
「い、いい加減にして。もうたくさん。お金だったら私が死ぬ気で稼ぐわよ。あんたなんか絶対頼らない」
威圧という名の攻撃に少したじろいでしまったけれど、負けるわけにはいかなかった。
握りしめた拳に力がこもる。
「18の小娘に一体何が出来ると言うんですか」
――――3億の融資はすでに実行されているんですよ。
その言葉に凍り付いた。
「さささ、3億……!? み、み、水商売でもなんでもすれば、それくらい……」
「無理ですね」
……だよね。
ケタが違いすぎるよね。
あまりのことにふらりと気を失いそうになる。だだっ広い砂漠の中にポトリと落とされた心地がした。暗い淵に引きずり込まれたような虚脱感に苛まれ、足元が覚束なくなる。
3億で私は売られてしまったの? この男のものにならないとダメなの? また心を殺して人形にならないといけないの?
わき上がる絶望的な疑問に、ジワリと涙が溢れそうになる。
そんな私を見て、鷹城さんはふっと笑った。
「一緒に暮らすといっても、貴女にはただ家事全般をお願いするというだけですが」
目の前が昏くなる私に、鷹城さんはそんな助け船を出すようなことを言う。
私は、重い思考に潰されそうになっていた頭をガバッと上げた。
「え? なに、それって、住み込みの家政婦さんみたいに扱うってこと?」
私の問いに、鷹城さんはこくりと頷く。
「お父上から聞きました。貴女が僕の妻になることを了承していないのだと。ならば、僕と賭けをしませんか?」
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