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「え?」
突然の『賭け』の提示に、ポカンとなる。
呆然と立ち竦む私に、鷹城さんは続けた。
「期限はハタチまで。その間、家政婦(ビジネス)として僕の傍にいて下さい。期限までに僕のことを好きになってくれたら。その時は、貴女を僕の妻として正式に迎えます。けれどもし、契約期間満了時に、僕の傍に居たくないと貴女が思うのなら。その時は、2年間の労働報酬として借金は帳消し、貴女を解放しましょう。いかがですか?」
淡々とした鷹城さんの言葉に、私の心は激しく揺れた。
3億の融資はもうすでに実行されている。
私が大学を辞めて外で働いたところで、3億なんて大金、一生働いても返せるとは思えない。
けれど、家政婦として住み込みで働けば、あと2年でチャラになると鷹城さんは言う。
鷹城さんにとっては不利な賭け。私にとってはこれ以上ない有利な賭け。
何故そんな条件を、彼は提示するのか。
鷹城さんに胡乱な目を向けてしまう。
何か裏があるのではと思ったんだ。でも鷹城さんは、私が好きになるって疑わない余裕な態度で微笑んでいて。
自信満々な彼の様子に、ムッと眉間に皺が寄る。
私は鷹城さんを好きになんてならない。私には絶対の自信がある。
2年間、彼の家政婦として徹していればいい。ただ、それだけ。家事なんて、今まで散々やってきし、難しいことは何もないように思えた。
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
「……手ぇ出したら許さないから」
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