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連れてこられたのはタワーマンションの最上階。ワンフロア全部が鷹城総一郎の自宅だった。
「ありえないんですけど」
玄関を開けた時の、私の第一声がこれ。
とても広い玄関。そして、これまただだっ広い廊下へと繋がっているわけなんだけど。
私は今、豪華過ぎて茫然自失となっているわけじゃなかった。
――――廊下が腐界と化していたのだ。
「なんで廊下に靴下とかシャツとか書類とか缶とか……うそっ、なんで灰皿が、って踏んじゃった! ナニこれマジで!? あり得ないくらい散らかってるんですけど!?」
男の部屋は雑然としてるものだという認識はあったんだけど、雑然どころの騒ぎじゃない。
山と積み上がる汚物の山に、足の踏み場もないのである。
まさに汚部屋。
人間の住む環境じゃない。家畜小屋でももっとマシだろうと目眩がしてくる。
目の前に広がる凄絶なまでの光景に、私は愕然と立ち竦んだ。
「僕は家事一切が出来ません」
さすが社長と賞賛したくなるくらい威厳に満ち溢れた姿で、そこが腐界でさえなかったら惚れてたかも、なんて思うほど見事な堂々っぷり。
しれっと言い放つ鷹城さんに、私はきょとんとなる。
「家政婦が先週辞めてしまったため、そのままにしてました」
先週って。
たった一週間でこうも汚くなるものだろうか。
泥棒が入ったとしても、こんなに汚くはなるまい。
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