明日、嫁に行きます!

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 片付けても片付けても綺麗になる兆しすら見えない室内に、私は半ば途方に暮れかけてしまっていた。  とにかく動かなければ終わらないと気を取り直し、再びとっちらかったものを仕分けし始める。  しばらく作業に没頭していたら、ラフな部屋着に着替えた鷹城さんが首にタオルを掛けた格好で洗面所から出てきた。  雑然と積み上がるゴミの山を縫うようにしてやってきて、冷蔵庫からビールを取り出すと、それを飲みながら私に声を掛けてきた。 「今日はもうそろそろ終わりにして、貴女もシャワーを使って下さい」  彼の気遣いに私は首を振った。 「この土日で何とかしたいからもう少し片づける。その後シャワー借りるわ」 「僕もしばらく起きていますが、ちゃんと眠って下さいね」 「りょーかい」  鷹城さんに答えを返して、私は手にしたゴミを再び袋に詰めてゆく。無言で作業する私に、鷹城さんは申し訳なさそうな目を向けてきた。  私は彼に、早く眠っちゃってという意味を込めて「おやすみー」と声を掛ける。  そうしたら鷹城さん、盛大なため息を吐いて、肩を落としたまま寝室へ戻っていった。  それから鷹城さんは、幾度となく寝室からひょっこり顔をのぞかせては私の邪魔? をしにやってきた。  その度に、「もう眠ったらどうですか」とか「明日が辛いですよ」とか「このまま僕のベッドに引きずり込んで強制的に寝かせましょうか」なんて、脅しともセクハラとも取れるセリフを口にして。  挙句の果てには、片付いたソファーの上で足を組みながら、私の行動を呆れた目で観察しだしたんだ。  じっと食い入るように見つめられて、落ち着かない私はとうとうプチッとキレてしまった。  「あ――――っ、も、ウザい! 邪魔するならさっさと寝て!」  追い立てるようにして鷹城さんを寝室へと遠ざけた私は、やっと一人になりホッと息をついた。  それから深夜3時を回った時刻、私はそっと鷹城さんの寝室をのぞいてみた。  鷹城さんってばベッド脇にあるカウチに座り円卓の上で突っ伏したまま眠り込んでいて、傍らには読みかけの本がそのまんまになっていた。  苦笑すると、私はベッドから毛布を引き摺り出して彼に掛けてあげる。  眼鏡を掛けたままだったので、それも外し、円卓の上に置く。  疲れてたんだろうな。  彼の顔は、どことなく憔悴しているように見えた。
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