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そういえば掃除の時、邪魔だったので端っこに除けたまま忘れてた。
段ボール、邪魔だな……。
一旦気になりだすと、どうにかしたい衝動に駆られてムズムズしてしまう。
玄関脇にあるトランクルームに隠してしまおうと箱に手を掛けた時、送り状に目に留まった。
書かれた名前に、ぽろっと目玉が落ちそうになる。
「なんでウチから!?」
送り主は母だった。
しかも、宛先の氏名欄には、鷹城さんと私の名前が連名で記されていた。
どういうことだと不審に思い、バリバリと段ボールを開けてみる。
段ボールの中身は、私の衣類と保存のきく食料品などがいっぱい詰まっていた。
「……これってやっぱり計画的だったんだ」
茫然と呟く。
昨日の夜、何度自宅に電話しても、誰一人出ないからおかしいと思ったんだ。
「……ハメられた」
ふつふつとした怒りがこみ上げるんだけど。
「と、とにかく、まずはお風呂……」
不眠不休で疲労困憊な私は、段ボールの中から下着やら部屋着やらを探り当て、睡魔でフラフラになる身体に鞭打って、なんとか浴室へと向かったのだった。
シャワーを浴びながら朝食の献立を考える。
幸いあの段ボールには食料品が入っていたため、朝食作りには間に合いそうだ。
買い出しに行かないとダメだなって思っていたから手間が省けた。
身体の汚れを綺麗に洗い流した私は、乾燥機からホカホカになったバスタオルを取り出し、濡れた体を拭く。
部屋着に着替え、長い髪をドライヤーで乾かしながら、今後のことに思いを馳せた。
「鷹城さん、なんで私にしたのかな」
嫁候補なんて、それこそ腐るほどいるはずだ。
どこそこのご令嬢とか、美人モデルとか、芸能人とか。
かたや私は、確かに綺麗だの美人だのと騒がれることは多々あるけれど、それを取っ払ったら、ただの生意気な小娘でしかない。
「裏に何かあるんじゃない?」
そう勘ぐってしまうほど、不自然極まりない話だと思うんだ。
「……鷹城さんってば、実はゲイとか」
そんなわけないか。と、笑う顔が引き攣った。
――――世間の目を誤魔化すための偽装結婚。
うん。この設定、ありそうだ。
だってお婆さん、彼が女性不信とか言ってたし。
ハッと目を見開く。
小刻みに震え出す唇を掌で覆い隠した。
私は今、大変な事実を知ってしまったのではないか。
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