明日、嫁に行きます!

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「……鷹城さん、ゲイなんだ」  そう思ったら全て辻褄が合う。  意のままに出来る女(家の借金を背負った私)を妻に仕立て上げることによって、大企業の社長である彼が、実はゲイである事実を社会的に隠蔽することが出来る。  妻を娶ることでお祖母さんも安心するだろう。  一緒に住むと言いながら、彼は私に手を出さないとまで約束した。    それは単純に、私自身に全く興味がないということに加え、女そのものに興味がない、故に、食指すらのびないからじゃないか。  そう考えると、彼がゲイ以外の何者でもないと思えてくる。  私の中で、予想が確信に変わった瞬間だった。 「誰がゲイですか」  突然、背後から聞こえてきたおどろおどろしい不機嫌な声に、「ひぃ――っ」と飛び上がってしまう。  ――――ゲゲゲゲイ様登場!? 「……貴女、本当に失礼極まりない人ですね」  本能的な不愉快さを双眸に滲ませながら、鷹城さんは怒気の混じる低い声を発した。  突き刺すような鷹城さんの視線から目を逸らせないまま、その場にカチンと凍り付く。   ……心臓止まるかと思った。  相手を萎縮させる鷹城さんの鋭く冷ややかな双眸から逃れようと、私は取り繕うようにして口を開いた。 「だ、大丈夫! 私、口は堅い方だから!」  胸を張って言い切る。  きっと鷹城さんは心配してあんな怖い顔をしてるんだ。自分がゲイであるという衝撃の事実を他言されやしないかと。  すっと目を細め、手負いの獣のように警戒する(ように私には見えた)鷹城さんに、「絶対言わないから安心して! 秘密厳守、誓います!」と、私はキリッと真面目顔で胸を叩く。  すると鷹城さんは、秀麗な容貌を呆れたようにふにゃりと崩し、きっぱりと断言した。 「僕は女性しか抱けません」  その言葉に胸を打たれた。  ――――まさかのプラトニックラブ!?  社会的立場や家柄を重んじる実家からの圧力で、好きな男性への想いを押し殺し、子孫繁栄のために好きでもない女を抱かねばならない鷹城さん。彼が想いを寄せる男性は、そんな鷹城さんの想いに気付かずに他の女性と付き合ってたりするんだわ。どんなに嫉妬しても、社会的立場から想いを告げることは出来なくて。告げたいけれど告げられない切ない想い。  ……なんか素敵……。  私の脳内では、ボーイズラブ的イケナイ妄想が昼ドラ仕立てで展開され始める。
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