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「……そうよね、プラトニックは辛いわよね……」
私の密やかな呟きに、カッと眦を吊り上げた鷹城さんは、般若のような形相で恫喝した。
「プラトニックってなんですか。気持ち悪い妄想はやめなさい。さもないと、今ここで、貴女を抱いてしまってもいいんですよ」
妄想世界にぶっ飛んでいた意識が現実へと戻ってくる。
え、今なんて言ったこの男。ゲイだと見破られた腹いせに、私を抱くって言ったの?
妄想が止まらなくてなんて言ったか聞こえなかったわ。
でも、なんかマズそう。
ひたと見据える鷹城さんの眸が怖すぎる。
怒りが炎上する前に、とにかく謝るが勝ちだとばかりに頭を下げた。
「ご、ごめんなさい、誰にも言いません!」
「だから! どうして貴女は僕がゲイであることを前提に話をするんですか!」
鷹城さん、顔を赤くして怒鳴ってる。
ゲイだとバレて、テレてるのかな? 別に私、偏見なんてないんだけど。
恋愛は自由だ、博愛主義万歳! なんて思いながら、そそくさと彼の傍から離れようとした私の腕が掴まれる。
え? と振り返った瞬間、鷹城さんの顔が間近に近付いてきて――――。
反射的に逸らした頭をグッと押さえ付けられて、鷹城さんの大きな影が私の身体を包み込む。
びっくりして声を上げようとした私の唇を、鷹城さんは自分の唇で塞いでしまう。
私、頭の中が真っ白になった。
唇はすぐに離れたんだけど、鷹城さんは私を抱き竦めたまま離してくれない。
衝撃のあまり、私は背中に棒を突っ込まれたみたいに直立不動のまま動けなくなる。
「……貴女に興味があると、どうしたらわかってもらえるんでしょうね」
ゾクリとするような凄艶(せいえん)な眼差しで見つめられて、動けない身体がさらに固まり、ついには石像と化した。
「わわわ、わかりましたゴメンナサイ……」
大根役者並みな棒読み口調で必死に謝罪する。
静かな怒気を滲ませる鷹城さんに、得体の知れない恐怖を感じて怯えてしまう。
私を捉える彼の眸に飢えたケダモノを見てしまい、本能的にこの場から逃げ出したくなった。
……怖い。
今、はっきりとわかった。
この男、かなり怖い部類の男だ。母と同じ系統の人間かも知れない。
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