明日、嫁に行きます!

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 色気たっぷりに微笑みながら相手を油断させ、問答無用で容赦なく『お仕置きよ?』と逃げ道を全て塞ぎ理路整然と正論を駆使してお説教する母のように。  こういう人種の人間は、逆らったら後が怖いんだ。 「わかっていただけたのなら、結構」  すっかり萎縮し怯えてしまった私を見て、ニヤッと嗤う鷹城さん。  その顔に、今、反論や抗議するだけの勇気も余裕もなかった。  こんちくしょー。よくもキスしやがったなバカヤローッ。  やっぱりゲイの方々は女に手厳しいという噂は本当だったか!  敗北感に満たされる中、私はがっくりと頭を垂れた。  心の内ではぶうぶう文句を垂れながらも、手元だけは朝食の準備に忙しなく動く。  その流れるような動作に、新聞を広げソファに凭れながらこちらを眺めている鷹城さんが、ビックリ顔になっていた。 「はい! 朝はいつもご飯かパンかわかんなかったから、とりあえず今日はご飯で。リクエストがあったら事前に教えてね。可能な限り答えてあげるから」  だし巻き卵にシャケの塩麹漬けを焼いたもの(お母さんありがとう!)、薄味で煮付けた高野豆腐と、キャベツの浅漬けにおみおつけ、そしてご飯。  和食にしてみました。まあ、少ない食材でこれだけできたら合格でしょ。うん。  テーブルに並んだ純和食な朝ご飯を見て、まだビックリ顔が解けない鷹城さん。 「貴女、料理まで出来たんですね」  茫然と呟かれたそのセリフに、私は斜め上からドヤ顔を披露する。 「私、6人弟妹の長女なのよ。出来て当然?」  ほら、褒めていいのよ。褒めて褒めて!  ふんぞり返る私に、鷹城さんはクスッと笑う。 「寧音は凄いです。掃除洗濯料理、全てにおいて完璧な貴女は、僕の妻に相応しい」  でしょう!?  私はただ愛でるだけの使えないお人形じゃないんだから!  他の女子よりスッゴい使える女なんだから!  ゴミ屋敷を一夜でモデルハウスにした、ビフォーアフターばりなこの凄腕!(ごめんちょっと盛ったわ)  見たか、過去の彼氏ども。鷹城コンツェルンの若社長にまで認められた、この実力!  ……って、今、この男、なにげに私のこと呼び捨てにしてなかった?  まだ言ってるし。妻とか。  ゲイを隠蔽するために偽装結婚を目論んでいる彼の計画は、未だ継続中というわけかと私は目を瞠った。
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