明日、嫁に行きます!

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「いらないし! やめてよね、そんな愛人にするみたいに扱うの! 自分の分は自分で揃える! 鷹城さんに揃えてもらう必要なんて一切ないっ!」  服なんてね、着れたらいいのよ。私の部屋着なんて中高の時に着てたジャージなんだからね! 思いのほか着心地が良いから、凄い愛用してるんだから。  それに、外出着なんて『しま○ら』や『ユニ○ロ』で十分事足りるんだから! 「頑固ですね。大丈夫ですよ、貴女の借金に上乗せしておきますので」  非情なセリフに私の頭がフリーズした。 「な、なに―――ッ!」 「必要経費ですから」  にっこり。  反論は許さねえって顔で微笑まれても、全っ然納得できない!!  鬼かこの男!  物申してやる! と、息巻いて口を開いた時、鷹城さんに腕をガシッと掴まれた。  「ああ、もうそのままでいいです」  私の腕を掴んだまま、文句の言葉も丸無視されて、そのまま外へ連れ出されてしまう。  ……最悪だ。  髪なんて輪ゴムで留めているのに、格好だってパリッとスーツを着こなした鷹城さんとは不釣り合いなものなのに、そんな女を『ブティック』なるセレブリティーな響きのする場所へ連れて行こうというのか、この男は。  なにこれ、まさかの羞恥プレイですか。  私は髪を縛った輪ゴムを外し手ぐしで整えながら、鷹城さんにつんと顔を向けた。 「ふん、残念でした。そんなことしたって私、ちっともビビってないんだから。で? 私はどうしたらいいの」  地下の駐車場に止めてあるグレーの高級車に乗せられ、ぶすくれたツン顔で疑問を口にする私に、鷹城さんは肩をくつくつ震わせた。 「ビビってるんですね。心配ないですよ。ラフなお店なのでそのままでも大丈夫。まずはそこで服を整えてから本社の方へ行きます」   本当に大丈夫なの? と思いながらも「ラフなお店」と聞いてホッとする。 「……本社って。私、全然関係ないじゃない」 「その後、食事に行くと言ったでしょう」  お前はバカか。  ミラー越しに冷笑を浮かべながら扇情的な視線を投げて寄越す男前に、私はイ――ッと威嚇してやった。 「ふっ、貴女は本当に飽きませんね」 「さっさと飽きてしまえ」 「それはあり得ません。やっと出逢えたのに」  いやにハッキリとした物言いと、『やっと出逢えた』という意味深なセリフが引っかかった。 「なにそれ。あのパーティーが初対面でしょ?」
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