明日、嫁に行きます!

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 彼は一体何をしたいのか。疑問が口から飛び出そうになる。 「あ、あの、買い物に行きたいんだけど」  家に帰りたいと言ったら問答無用でダメと言われそうなので、当たり障りのないことを言ってみる。  けれど、 「鷹城様から外には出すなと言われてますので」  すいませんと頭を下げられてしまう。  これでは護衛と言うよりも見張りといった方が正しいのではないだろうか。喉まで迫り上がる文句の言葉を、ゴクリと飲み下して耐えた。 「た、鷹城さんに言われてるの。今から行かなきゃ、彼が帰ってくる時間に間に合わない」  なんて、へらりと引き攣り笑いを浮かべながら言ってみるんだけど、 「申し訳ありませんが」  無理です。と返された。  私はムッと彼らを睨んだ。 「じゃあ、貴方たちがついてきてくれたらいいんじゃないの」  絶対巻いてやると心の中で舌を出しながら提案してみる。  ふたりは顔を見合わせた。そして、ひとりが携帯を取りだしたのを見て、私は焦った。 「あ! 鷹城さんには私からメールしたから大丈夫。護衛がふたりもついているんだから問題ないでしょ!?」  ねっねっ、と必死になって掻き口説く。 「わかりました。私達も同伴します」  ため息交じりな彼らの言葉に、私はホッと胸をなで下ろした。  私は近所にあるスーパーへと、大柄な黒服男を二人も従えて入るハメになった。  なんか妙に注目を集めているのがイヤ。皆見て見ぬふりをしているのが分かって、ホントにイヤだ。  カートにこれでもかというほど商品を入れてゆく。  支払いは鷹城さん持ちだ。  こんな恥ずかしい思いをさせられたんだから、それぐらいは大目に見て欲しいと独りごちる。  精算時、以前彼から渡されていたクレジットカードを提示する。  この黒いカードを渡された時は真面目にビビった。  いらないと一度は断ったものの、必要経費はここから出せと結局押しつけられてしまったんだ。  食料品とか日用品など必要最低限のものを揃える以外に使ったことはなかったけれど、今日はお構いなしに買い込んだ。  瓶類やお米などわざと重いものを買い込み、結果、ただの買い物にしてはあり得ない重量になっていた。  そして、その大量の荷物を彼らに「はい持って」と渡して、自分は手ぶらでマンションまでの大通りを悠々と歩いてゆく。  彼らの両手は今、完全に塞がっている。
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