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【2】 三つ子のヤクザ
「今…何と?」
私は思わず聞き返す。
「だから、ここがオマエの部屋」
男はそう言って、廊下の突き当りの部屋を顎で示す。
部屋…。何で?
歩道橋から飛び降りようとして、この人に声をかけられて、乱舞組から逃げるためについて来ただけなのに。
何で私は今、結構立派な屋敷で、部屋を与えられているんだろう。
困惑していると、男が部屋のドアを開けた。
廊下からチラっと見える範囲でも、部屋がかなり広いと言うのはわかる。
この部屋だけで、私が住むアパートの角部屋より広い。
「オマエに何があったかは知らねぇし、無理に聞こうとも思わねェが。ひとまずここで休んどけ」
理由、聞かないんだ。
聞かれなくて安心する反面、それでも部屋に置いてくれる理由がわからなくて、怖い。
でも、今外に出たら乱舞組に出くわすかもしれないし…。
乱舞組に家までつけられたら、家族にも迷惑をかける。
ひとまず、好意を受け入れた方がいいのかも。
「…あ、ありがとうございます…」
でも、何かあったときすぐに逃げれるように、逃げ道だけは探しとこう。
私は恐る恐る部屋に足を踏み入れた。
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