突然の告白

14/23
前へ
/75ページ
次へ
「…もしもし?」 かなり苛立たっていた俺は、普段の倍以上不機嫌な声で電話に出た。 …が、電話から聞こえた相手の“声”に、一瞬息を飲んだ。 「…あ、松井?ごめんねこんな時間に…」 ― 彼女、竹中の声だった。 「あ、いや…いいけど。何?何かあった?」 俺は動揺を隠して、冷静を装ってそう答えた。 まだ傍らには、辻野と小西がぴったりと張り付いて、俺が何か余計な事を言わないかと見張っている。 …時々、腕で×マークを作って俺に見せてくる。 「あ、うん。…あのね、小西さんの事なんだけど…」 ドクンっと心臓が脈打つ。 彼女にだけは言えない。 別に口止めされてるからじゃなく、彼女に誤解されるのだけは嫌だ。 ―彼女にだけは嫌われたくない ― 「あ、ああうん。」 「…もう聞いてると思うけど…。彼女、帰って来ないらしいの。」 「…へぇ」 「松井、あの子と仲良いでしょ?…何か知らない?行きそうな場所とか…。」 「いや、…知らないし聞いてない。」 「…そっか。…………」 「うん…」 何だ、今の間は… 何か俺、ミスったか?平静を装い過ぎて、逆に不自然だったか…? 一抹の不安に、俺が襲われかけた時、彼女があり得ない程の冷たい声で言った。 「…もし、もしも連絡あったらさ、「家に連絡入れろ」って“伝えて”くれる?」 …伝えて、の所に若干の重さを加えて、彼女は言った。 「ああ、わかっ…」 ガチャ …俺の了解の言葉を最後まで聞かずに、彼女は電話を切った。 …バレている。 何故だか判らないけど、彼女には『二人はここにいる』とバレている。 俺は受話器を置き、見張っている二人を無視してベランダへ出た。 …何でこうなるんだよ! 二人を泊める声を快諾した親にも、それを止められなかった自分自身にも、こんな事に俺を巻き込んだ二人にも… 言葉にならない怒りを自分の拳に乗せて、 コンクリートの壁を一発、思いきり殴って部屋に戻った。 俺の行動に二人は驚き、俺の殴った手を心配していた様だが…どうでもいい。 手なんか痛くない。 …胸の奧が、握り潰されそうに痛かった。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加