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「おにいたっ!」
不意に、不機嫌な俺の耳に俺を呼ぶ妹の声が聞こえた。
俺は3人兄妹の長男、2つ下の妹と、今俺を呼んだ15歳下の妹がいる。
この妹…望(ノゾミ)は誰よりも俺になついていて、一緒に連れて歩くと「お前の子供じゃないの?」と言われる位、俺に似ている。
まだ一歳ちょいで、やっと歩ける様になった覚束無い足で、
やっと喋れるようになった口で、俺を呼び、抱きついて来た。
「おにいたぁ~」
…ああ、可愛い。
そうだよな、俺が今更苛ついても仕方ない。俺は何もしてないし、するつもりも毛頭無い。
なら、悠然と構えてりゃいい。俺が好きなのは彼女だけなんだから。
今までも、これからも…。
俺は望を寝かしつけに行き、元々の俺の部屋に2つ布団を敷いて辻野と小西を寝かせる用意をして、
俺自身はもう一人の妹、久美の部屋で寝る事にした。
「…ねぇ、お兄ちゃん?」
敷いた布団に横になった時、久美が俺に聞いてきた。
「何?」
「お兄ちゃんの彼女ってどっちなの?」
「はぁ?」
「え?…どっちかが『彼女』だから停まりに来たんじゃないの?」
「…どっちも友達。下らない事言うな」
俺はそう言うと、寝返りを打ち布団を頭から被って、ひたすら寝る事に徹した。
…妹まで勘違いするんだから、彼女は余計に…
ああ、考えるな。
考えたら、心がざわついていてもたっても居られなくなる…。
…考えるな、俺。
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