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「くす……」
膝枕歴11年(竹蔵専用)の桜子は、これ以降黙ってしまった。
特に喋る事も無いからだ。
二人でぼーっとして時を過ごす。
それはお互いにとって、価値ある時間だった。
酸素、二酸化炭素、窒素、明かり、時間を共にする事が、二人にとっての癒やしであった。
それが何を意味するかをお互い知らずに。
(竹蔵さん、今日はちょっと調子良いですね)
桜子は、エア絶叫の様子から竹蔵の今日の喉の良さを知った。
本当にエアに喉が関係するのだろうか。
甚だ疑問である。
(お母さんから昨日、竹蔵君とはステディな関係よねーって言われましたが、ステディってなんでしょう……)
ジェネレーションギャップである。
ABCのどこまで行った? と聞いても分からないであろう。
(お父さんはそれ聞いて泣きそうな顔してましたけど…………今度調べてみましょう。きっと悲しい事ですよね)
これは恐らく、進展の兆しであろう。
言葉による認識ではあるが、親からの言葉であるので多少の刺激にはなる筈である。
(額が広いですねえ)
桜子は竹蔵の額を撫でながら、香蔵の帰りを待つのであった。
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