序章

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「人類全体に声を大にして言う! 俺と仲良くしたい人間以外死ね!」 「はあ」 「日本の女に声を大にして言う! 黒髪以外は認めない! ロング推奨!」 「はあ」 「日本のゲーム業界に声を大にして言う! 画質が良ければいいってもんじゃない! でも内容だけ良ければいいってもんじゃない! どっちも大切だっ!」 「はあ」 「擬人化が好きな人間に声を大にして言う! パソコン本体を擬人化したらどうだろう!?」 「はあ」  桜子は最早、竹蔵の馬鹿話にほとほと呆れ果てていた。  だが、竹蔵はいつもこうなので、呆れたというよりも慣れてしまって、スルースキルが高くなってしまっていたと言うべきであろう。 「そしてお前にも声を大にして言う! 帰ろう!」 「はい」  やっと終わったか――――みたいな表情をおくびにも出さずに、桜子はバッグ片手に立ち上がった。  そう、ここは放課後の教室。  二人以外は「あらほほえましーわねー」とか「リア充氏ね」とか「もう付き合っちまえよ」言いながら、既に全員教室を出ている。  竹蔵の友人も「ごっそさんです」とか言いながらそそくさと部活へ行った。  当然、上記の台詞は二人は聞いていない。  竹蔵は、授業中に思いついた事を言うのに必死で、桜子はスルースキル発動に精一杯なので、聞いていないというより聞こえていないのである。  そもそも、二人共お互いをただの幼なじみだと思っているので、付き合うという思考も無い。  男女という意識も殆ど無い 「最近、勉強ちゃんとしてます?」 「するわけねえだろ」  帰りながらの雑談。  桜子は竹蔵の3歩後ろを歩いている。  帰宅中での話は基本的に、桜子が説教するケースが多い。 「しなきゃだめですよ?」 「なんでだよ。しなくていいならしない方が良いって絶対。適当にやっときゃいいんだよ」 「やりたい事だけやって、やりたくない事はやらない人、ですか」 「そうそれ!」
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