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「そういえば、部活決めました?」
そろそろ仮入部期間も過ぎる。
部活に入るならいいかげん決めなければならない。
「部活なんぞやらん!」
またしても仁王立ちしそうな勢いで言う竹蔵。
腕を組むのが様になっている。
「どうしてですか?」
「桜子、俺はな? 家でゆっくりのんびりしたいんだよ。インドア派なんだよ」
「囲碁部とか、将棋部とかもインドアですが」
「俺は頭を使わないインドア派なの」
竹蔵の趣味は、ぼけーっとする事である。
その気になれば、というか誰かが竹蔵に話しかけなければ、竹蔵は休日ずっとぼーっとしている。
ベッドの上で24時間ぼーっとしている。
「そういうお前は部活入らないのかよ?」
「竹蔵さんが入らないなら、私も入りません。私もぼーっとします」
「言っておくがなお前、俺は別に自分の世界に入ってる訳じゃないぞ?」
竹蔵の両親は、竹蔵がぼーっとしている事を「竹蔵ワールドに迷い込んだ」と称している。
つまり、竹蔵はいつも自分の世界を構築して入り浸っていると勘違いされているのだ。
「はい」
「分かってるよな? 俺は時間がただ無為に経過するのが好きなんだよ。何も起こさずに何も起きずに」
「はい」
「できれば身体なんか動かしたくないんだよ。仕方ないからこうやって動いてるけど」
「はい」
「だからってニートとかになる予定もないし、ちゃんと社会人になる予定だし」
「はい」
「でもやっぱ、出来るだけ動きたくないんだ。分かってくれてるよな?」
「はい」
そう、桜子は竹蔵の事をよく理解していた。
竹蔵がぼーっとするのは、日常を愛しているからだと理解していた。
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