あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ！

序章

「牛肉が食べたいなら、牛に食べられる覚悟も必要だっ！」

　高校一年生にもなって極論をふりかざす男子、竹倉竹蔵（たけくら　たけぞう）は、放課後の教室で仁王立ちをしている。

　中肉中背、黒の整いきらない短髪、日本人らしい短い足。

　あと一歩間違えれば不細工――――に類される男子、それが竹倉竹蔵である。

　声は理科系の男にありがちな、甲高いもの。

　それが耳に障ると非難するのは、ここいらへんでは竹蔵の妹のみ。

「なら、貴方はいつでも死ぬ覚悟が出来ているというのですか？」

　椅子に座り、丁寧口調で対応する彼女は、天夢桜子（てんむ　さくらこ）。

　一見、黒髪の童女にしか見えないが、彼女はれっきとした１５歳の、花もはじらうかもしれない女子高生である。

　艶の有る長く綺麗な髪。

　眉目秀麗。

　鈴を転がした様な綺麗な声。

　陶磁器の様に白いきめ細やかな肌。

　最近のマイトレンドはポニーテールと割烹着。

　竹蔵は桜子のうなじに目を奪われがちである。

　身長は１５０センチ程度。

　小学生の竹蔵の妹よりは背が高いものの、どんぐり同士程度の差でしかない。

「当然だ！　生きる以上は死ぬ覚悟も出来て当然！」

　言いながら、桜子の座る机をばんと両手で叩く竹蔵。

「はあ」